海外現地法人の当局対応で起きたトラブルと失敗談【人事・総務の実務】

海外現地法人の人事・総務では当局とのやり取りが思いのほか厄介な仕事です。

必要な書類をそろえたつもりでも窓口で受け付けてもらえない。いつ終わるのか見通しが立たず、現地スタッフからの報告を待つしかない。日本の感覚で予定を組むと思わぬところで足をすくわれます。

駐在員のビザを取り直す羽目になったり、日本から送った荷物が税関で止まったりと、いろいろな失敗やトラブルを経験しました。

当局対応は現地スタッフに任せる部分が大きく、日本人管理者がすべてを把握するのは難しいのが実情です。それでも基本的な仕組みを知っていれば防げた失敗はありました。

海外旅行で駐在員のビザが失効した話

以前、タイに赴任したばかりの日本人社員が休日を利用して近隣国へ旅行に出かけたことがありました。

本人は何事もなくタイに戻ってきたのですが、その後長期滞在のための手続きを進めようとしたところ問題が発覚しました。商用ビザで入国していたはずが、再入国時にはノービザで入国していたのです。

タイではノンイミグラントBビザ(商用ビザ)で入国し、その後に滞在許可の延長やワークパーミットの取得を進めるのが一般的です。しかし、この社員はシングルエントリーのビザを所持しており、リエントリーパーミットを取得せずに出国したため、当初の滞在許可が失効していました。

これでは予定していた手続きを進められません。結局、本人に再び国外へ出てもらい、商用ビザを取得し直すことになりました。本人の移動だけでなく申請書類の準備や社内での調整もやり直しです。

出国前にリエントリーパーミットを取得していれば防げたトラブルでした。駐在員のビザや滞在許可は本人任せにせず、出入国の予定まで人事・総務部門で確認する体制にしておきたいところです。

タイでは登記簿のコピーにも一枚ずつ署名が必要

タイで行政手続きを進める際、意外と手間がかかるのが提出書類への署名です。

会社の登記簿や代表者のパスポートのコピーを提出する場合、コピーした書類にも代表者の署名を求められます。登記簿は何ページにも及ぶため、必要なページすべてに署名するだけでも結構な作業になります。

書類の内容が正しくても署名がひとつ抜けているだけで窓口では受け付けてもらえません。提出直前に署名漏れが見つかり、代表者が外出や出張で不在だと厄介です。署名ひとつのために書類を持って行き来し、申請を別の日に延期する羽目になることも。

現地語の申請書類をどこまで確認できるか

海外現地法人では行政機関や銀行に提出する書類は現地語で作成されています。社会保険や所得税の申告書類など、会社にとって重要なものでも日本人管理者が内容を十分に理解できないまま署名する場面があります。

担当スタッフに内容を確認することはできます。私も繰り返し確認しましたが、現地の制度を十分に理解していなければその説明が正しいかどうかまでは判断できません。重要な書類に署名する立場としてはなかなか悩ましいところです。

信頼できるスタッフが担当していれば負担は軽くなりますが、すべてを任せきりにするのも考えものです。会社に大きな影響を及ぼす申請や契約については外部の専門家による確認が有効です。定期的な確認に加え、抜き打ちで第三者の目を入れることで担当者への牽制にもなります。

最近はAI翻訳やスマートフォンのカメラ翻訳が進歩し、以前に比べれば書類の内容を確認するハードルは大きく下がりました。かつては一枚の書類を理解するだけでも相当な時間がかかったことを考えると、管理者にとってありがたい変化です。

日本から送った荷物が税関で止まった話

ベトナムの現地法人に日本から送られてきた荷物が空港の税関で止められたことがありました。配送状況を確認しても「税関で確認が必要」という説明ばかりで荷物は一向に届きません。

現地スタッフに空港まで出向いてもらい税関で直接対応してもらうことになりました。その際、50万ドンを支払ったところ荷物を引き取ることができました。支払いの根拠は明確ではなく、それまで進まなかった話があっさり片付いたことを覚えています。

別の機会には数字がびっしり並んだ業務用の書類を日本から送ったところ、何らかの暗号ではないかと税関に疑われました。こちらとしては普通の業務書類でも税関側が何を問題視するかは予想できません。

当局が何を問題視しているのか、どうすれば解決するのか。今回のように最後まで釈然としないまま話が片付いてしまうのが当局対応の難しさです。日本人管理者が直接介入するのも難しく、現地スタッフの交渉力や経験に頼る部分が大きいのが実情です。

行政手続きはいつ終わるのか分からない

税務署や社会保険事務所、入国管理局などの窓口では長時間待たされるのが日常茶飯事です。ようやく順番が回ってきても書類の不備を指摘され、申請を受け付けてもらえない。何を修正すればよいのか十分な説明もなく、結局その日は何も進まずに終わります。

バンコクにはビザやワークパーミットの手続きをまとめて行えるワンストップサービスセンターがあります。しかし利用者が多く、順番を待つだけで一日が終わってしまうほどの混雑ぶりです。

ところが同様の手続きをラヨーンのイミグレで行った際は驚くほどあっさり終了。窓口によって状況がまるで違い、どれだけ時間がかかるのか行ってみるまで分かりません。

担当者とのやり取りや書類不備への対応など、日本人管理者が直接手を出せる範囲は限られています。経験の浅いスタッフに任せて手続きが何度も止まるようなら外部のコンサルタントに依頼する方が結果的に時間と費用を抑えられるでしょう。

当局対応の遅れはその後の採用や赴任、給与処理などにも影響します。申請が通るまでの日数を楽観的に見積もると、最後に困るのは現地法人の管理者です。

現地スタッフに任せざるを得ない当局対応

海外現地法人の当局対応は現地スタッフの経験や能力に大きく左右されます。日本人管理者がすべての手続きを理解し、窓口で直接対応するのは現実的ではありません。というか不可能です。

だからこそ、現地スタッフに任せる部分と管理者自身が確認すべき部分を見極める必要があります。重要な手続きについては外部の専門家の力も借りながら、担当者任せで中身が見えなくなる状態だけは避けたいものです。

当局対応に限らず、現地スタッフへの仕事の任せ方や日本人管理者の関わり方については海外拠点の現地スタッフ管理でも取り上げています。

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