海外で採用面接をしていると、履歴書に書かれている情報と実際に会って話したときの印象が大きく違うことがあります。
私はベトナムの人材紹介会社で候補者との面談を担当したほか、拠点長として自社の採用にも関わってきました。タイでは人事部長や現地責任者として採用面接を行っています。
タイとベトナムでは採用市場も人材の特徴も異なりますが、面接で確認してきたポイントには共通するところもあります。履歴書をどこまで信用するのか。転職理由をどう聞くのか。語学力をどう確認するのか。
ここでは現地で採用面接をするときに見てきたポイントをまとめます。
履歴書の語学レベルはその場で確認する
海外での採用で特に注意したいのが履歴書に書かれている語学レベルです。
英語について「Intermediate(中級)」と書かれていても、実際に英語で質問すると、ほとんど会話にならないことが結構あります。
日本語でも同じです。「中級」と書いている候補者と話してみると、実際にはN5にも届かないと思われるレベルだったこともありました。
ここは日本人の自己申告とはかなり感覚が違います。
仕事でその言語を使うのであれば面接中に実際に話してもらうのが一番確実です。英語が必要な仕事なら英語で質問する。日本語が必要なら日本語で会話する。資格は参考にしつつ、仕事でどこまで使えるかは本人と話して確認します。
資格については、さらに極端なケースもありました。
ベトナムで人材紹介をしていたとき、日本語能力試験(JLPT)N2として企業に紹介した候補者がいました。ところが紹介先で確認したところ、実際に合格していたのはN3でした。候補者が提出した合格証の「3」を削り、「2」に修正していたのです。
私たちもそれを見抜けないまま紹介してしまい、紹介先から当然怒られました。
かなり極端な例ですが、提出された証明書そのものが改ざんされていたケースもあります。語学資格を重視して採用する場合はこんなこともあるという程度に頭に入れておいてください。
履歴書写真の加工やタトゥーは現地採用では珍しくない
特に女性の候補者では履歴書の写真がかなり加工されているケースがありました。実際に会うと、写真から受けた印象とかなり違うことがあります。
内勤なら気にしない会社もあると思いますが、営業など顧客と直接会う職種では会ったときの印象も確認しておきたいところです。
工場ワーカーの採用では会って初めてタトゥーがあると分かることもありました。ワーカーがタトゥーを入れていること自体は一般的な話です。
現地では特に珍しくなくても、日本人側が気にするケースはあります。ここは会社によって判断が違うので、気になるのであれば採用前に確認しておけばいいと思います。
用意してきた回答を全部出してもらってからが面接
転職理由を聞くと「新しい環境で成長したい」「新しいことに挑戦したい」という答えがよく返ってきます。タイでもベトナムでも何度聞いたか分からないくらいです。
私はまず、候補者が用意してきたことを一通り話してもらいます。それを全部出してもらってからが面接のスタートです。
例えば「成長したい」であれば、何ができるようになりたいのか、本人にとって成長とは何なのかを聞いていきます。成長したいという回答だけではかなり表面的で、本人もまだうまく整理できていないことがあります。
そこから質問を続けていくと、本当の転職理由や次の会社に求めているものが少しずつ出てきます。
作ってきた話なら途中でつじつまが合わなくなることもあります。でも、面接で見たいのはそこからです。予定していなかった質問をされたときにどう考えるか。話が崩れたときにどう立て直すか。そういうところにその人の能力や考え方が出ます。
何でも深く聞けばいいわけではありません。「なぜ当社なのか」は、よほど自社に特徴がない限りそこまで追いません。転職活動で複数の会社を受けるのは普通です。そこで確固たる志望理由を求めても、面接用の答えを作らせるだけになりがちです。
現地スタッフと日本人では面接で見ているところが違う
現地スタッフに一次面接を任せることもありました。そこで気づいたのが私と現地スタッフでは候補者を見るポイントが結構違うことです。
現地スタッフは人柄や一緒に働きやすそうかをよく見ています。私は自身が候補者とコミュニケーションを取ることも考え、英語力を気にするところがありました。
実際に語学力が少し気になったものの、現地スタッフの評価が高く採用した人がいます。働き始めてみると語学力は高くなくても非常に仕事がしやすい人でした。これは現地スタッフの見方を信じてよかったケースです。
現地スタッフから評価を聞くときは「良かった」「合わないと思う」だけではなく、なぜそう思ったのかまで聞きます。
例えば「この人は一緒に働きやすいと思う」という評価なら、どんな受け答えや態度を見てそう感じたのか。そこまで聞けば次の面接で確認するポイントが見えてきます。
ここで現地スタッフと同じ目線でもう一度面接する必要はありません。むしろ現地スタッフがあまり見ていなかったところを確認します。
身だしなみや顧客の前に出たときにどう見えるかはその一つです。現地スタッフは基本的に「自分たちがこの人と一緒に働けるか」という目線で候補者を見ています。それは採用ではかなり重要ですが、営業職などでは社内での働きやすさだけで判断できません。顧客とのやり取りを任せられるか、社外の人と接するときにどう見えるかは二次面接で確認していました。
面接のやり方自体を変えることもあります。一次面接をした現地スタッフが柔らかく話すタイプなら、私はあえて「なぜ?」を重ねます。答えにくいところまで聞いて、その場でどう返すかを見る。
二人で面接するなら同じことを二回聞いてもあまり意味がありません。現地スタッフが何を見たのかを聞き、そこで見えていない部分を次の面接で見る。そんな使い方をしていました。
タイやベトナムでの採用では日本と感覚が違うところがあります。履歴書に書かれた語学レベルをそのまま信用できないこともありますし、転職へのハードルが低い分、転職理由も日本人ほど作り込まれていません。
面接だけで候補者のすべてを見抜くことはできません。それでも履歴書の書き方や転職に対する感覚の違いを知っていれば、質問の仕方や見るポイントも変わってきます。
採用後に期待した能力との違いが分かった場合は試用期間中にどう対応するかも重要です。海外拠点の試用期間管理では能力不足への対応や本採用の判断について取り上げています。
