報連相をしない現地社員、報告を待つ日本人駐在員

海外の現地法人で現地社員から「DJ」と呼ばれていた日本人駐在員がいました。

理由はいつもヘッドフォンをつけてオンライン会議をしていたからです。個室にこもり、日本本社との会議やパソコン作業に多くの時間を費やしていました。

日本本社との調整や報告も駐在員の重要な仕事です。本人は忙しく働いていても現地社員には個室で何をしているのか見えません。業務上の相談をしたくても声をかけるタイミングがないのです。

何かあればいつでも相談してほしい、と口にする駐在員。ですが、個室にこもって会議を続ける本人に現地社員はいつ声をかければよいのでしょうか。

海外現地法人では「現地社員が報連相をしない」という日本人管理職の不満を耳にします。

報告が上がってこない原因は本当に社員側にあるのでしょうか。現地社員が報告をためらう背景と、報告を待つ日本人駐在員の仕事の仕方について考えます。

現地社員は本当に報連相ができないのか

問題が発生しても報告がない。業務の進捗を尋ねて初めて遅れが発覚する。重要な変更が現場だけで決まっている。

報告が遅れれば対応も後手に回ります。必要な報告を怠る社員にも問題があり、組織としてルールを徹底させることは欠かせません。

日本式の報連相が海外でも当然に機能するとは限りません。何を、いつ、誰に報告するのか。管理者と現地社員の間でその認識にずれが生じています。

そもそも、報告が来ないことを嘆く管理者自身はどれだけ現場の情報を取りに行っているでしょうか。

部下から報告が上がってくるのを待ち、問題が発覚してから「なぜ報告しなかった」と問い詰める。それでは管理者として必要な情報を把握する責任を部下に委ねていることになります。

報告が上がってこない職場に共通する問題

上司に話しかける機会がない

個室で仕事をする日本人駐在員にとって現地社員との接点は会議や業務報告に限られがちです。

現地社員が業務上の確認をしたくても、駐在員は個室でヘッドフォンをつけて会議中。会議が終わったと思えば、また別の会議が始まります。話すのは後にしようと考え、そのまま確認が先延ばしになる。

日本本社ばかりを見て仕事をしていると足元の現地社員が声をかける機会を失っていることに気づきません。

日本本社からの問い合わせにはすぐ対応するのに現地社員からの相談は後回し。駐在員本人は仕事の優先順位をつけているつもりでも、社員から見れば自分たちの話を聞く時間はないように映ります。

日本本社との会議や機密性の高い業務では個室も必要です。それ以外の時間まで個室にこもっていては現地社員との距離は広がるばかりです。会議が終われば執務スペースに戻る、定期的に現場を回るなど、日常的に顔を合わせる機会を確保したいところです。

報告した結果、叱責される

問題を報告した社員に対し、原因や報告の遅れを厳しく問い詰める管理者がいます。

ミスや報告の遅れは指導しなければなりませんが、毎回厳しく叱られていては社員も悪い情報を伝えたくなくなります。

小さな火種のうちに報告されず、大火事になって初めて管理者の耳に入る。そこでまた叱責すれば次の火種も報告されなくなります。

報告がないと怒っている管理者が、実は社員を報告から遠ざけているのかもしれません。

報告すべき情報の認識が違う

管理者にとって重要な問題でも現地社員が同じように認識しているとは限りません。

例えば生産ラインで設備トラブルが発生し、生産計画に遅れが出ているとします。現場の担当者は残業や翌日の生産調整で取り戻せると判断し、上司には報告しません。ところが復旧が長引き、納期に間に合わないとわかった段階で初めて報告が上がってきます。

また、現地マネージャーが対応できると判断し日本人駐在員には報告しないケースも考えられます。

現場にとっては自分たちで対処できる問題でも管理者にとっては早急に把握すべき問題かもしれません。納期への影響が見込まれる時点で報告するなど、判断の基準をあらかじめ決めておくことが大切です。

報連相を社員にどう教えるかについては海外拠点の社員研修でも触れています。

報告を待たずに現場の情報をつかむ

管理者も自分から情報を取りに行く

部下が報告してくるのを待つ。それが管理者として正しい姿勢なのでしょうか。

管理者は現場全体の状況を把握し、判断する立場にあります。だからこそ自分から情報を取りに行くことが大切です。

現場を回り、担当者に進捗や困っていることを尋ねる。生産計画を確認する際に進捗だけでなく設備の状態や人員配置、今後の懸念点まで聞いてみる。現場の担当者が問題と認識していない事柄にも目を向けます。

報告がなかったから知らなかった、では済まされないのが管理者の立場です。

こうした確認を日常的に繰り返すうちに社員も上司がどんな情報を必要としているのか理解していきます。普段から話す機会があれば声をかける抵抗も薄れ、社員の側から報告や相談をするようになっていきます。

現場で情報を集める際には現地マネージャーの立場にも配慮が必要です。担当者から直接話を聞くことと、その場で業務指示を出すことは別です。

駐在員が現地マネージャーの知らないところで指示を出し始めると部下は誰の判断に従えばよいのか分からなくなります。情報は自分でも集め、業務上の指示は原則として現地マネージャーを通します。

現地マネージャーを飛び越えて指示を出す問題については海外拠点の現地スタッフ管理でも取り上げています。

上司だから報告を受けるのではなく、上司だからこそ情報を取りに行く。

悪い報告ほど冷静に受け止める

問題の報告を受けたらまず状況と影響範囲を確認します。報告の遅れで被害が広がっていれば腹が立つのも当然でしょう。

そこで担当者を問い詰めるより、先に関係部署への連絡や顧客への対応を進めなければなりません。原因の究明や担当者への指導は当面の対応を終えてからです。

ヘッドホンを外したとき、現場は見えているか

日本本社との会議を終え、ヘッドホンを外す。周囲の現地社員はいつもどおり仕事をしていますが、その間に何が起きていたのか、駐在員はどこまで把握できているでしょうか。

報連相が足りないと感じたときは、社員の報告の仕方だけでなく、自分が普段どれだけ現場と接しているかにも目を向けたいところです。

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