ベトナムでは人材紹介会社で働き、その後タイやベトナムで採用する側として人材紹介会社を使ってきました。
人材紹介会社は採用企業の外部人事部ではありません。成功報酬で動く営業会社でもあります。求人には優先順位があり、候補者にも優先順位があります。
人材紹介会社で追っていた数字
人材紹介会社にいたときは売上、面接設定数、推薦数、求人獲得数、成約数まで追っていました。推薦した候補者が書類選考や面接を通過しているかも見られます。
人材紹介は採用が決まらなければ売上になりません。入社日が請求の基準になるため社内では売上を入れたい時期から逆算して動いていました。
人材紹介の売上はかなり水物です。決まりそうだった候補者が辞退する、企業側の都合で採用が止まる。こんなことはしょっちゅうあります。
売上目標から逆算してこの日までに候補者を紹介する、この時期までに面接を終わらせると動いていました。数字が足りなければ追い込み営業会議も普通にありました。
求人には優先順位がある
社内では求人ごとに難易度を付けていました。A案件なら優先的に推薦する。C案件は難しいので時間をかけすぎない。そんな形です。
C判定の求人は条件に合う候補者が出てきたら紹介します。結局そのまま候補者が出てこないことも多いです。
見つからなければ企業にはその旨を伝えます。ここを放置してしまい「どうなっているんだ」と企業から怒られるパターンもありました。
求人の優先順位は難易度だけで決まりません。
候補者を紹介したときのレスポンスが早い、すぐに面接を設定してくれる、過去に紹介から採用まで決まっている。こうした求人には動きやすいです。
新しくもらった求人には特に注力します。求人が出たばかりということは今まさに採用需要が発生しているタイミングです。他の人材紹介会社も動いているので早く候補者を紹介できるかの瞬発力勝負になります。鉄は熱いうちに打て戦法です。
採用する側では基本的に2〜3社の人材紹介会社を使っていました。一社で候補者が出てこなくても、別の会社が持っている候補者DBには該当する人がいることがあります。
営業、総務、経理など一般的なポジションなら2社ほどで十分候補者が集まります。専門性の高いエンジニアや他国籍のスタッフを探すときはもう少し門戸を広げます。
候補者にも優先順位がある
優先順位があるのは求人だけではありません。
人材紹介会社に登録した候補者は最初のうちは求人を紹介されやすく、時間が経つにつれて紹介は減っていきます。決まりやすい候補者は紹介会社としても優先します。推薦後の通過率もKPIで見られるからです。
良い候補者がいれば複数の求人を紹介します。企業から見れば自社に紹介された一人の候補者ですが、その裏では他社の選考も同時に進んでいます。
タイやベトナムの現地採用は日本と比べて選考から入社までがかなり速いです。面接1回で採用を決め、そのまま1週間ほどで入社したケースもありました。日本でよくある面接2〜3回、内定から入社まで1か月という採用スケジュールとはスピード感が違います。
良い候補者を紹介してもらったときは私も早めに面接を設定していました。社内で検討している間に他社で採用が決まることがあるためです。面接では履歴書の語学レベルや転職理由をその場で確認します。
条件に合わない候補者をあえて紹介することもある
人材紹介会社に依頼していると希望条件と違う候補者が紹介されることがあります。
これは意図的にやることもあります。
たとえば企業の想定より希望給与が高い候補者です。予算を超えていても良い候補者なら企業が検討してくれることがあります。日本語レベルが少し足りなくても現在勉強している、経験年数は短いが近い仕事をしているなど、条件から外れていても紹介する理由があれば候補者を出します。
求人票をもらっただけでは企業がどこまでなら条件を変えられるのか分からないことが結構あります。候補者を紹介して「給与は高いけどこの人なら会いたい」「日本語は足りないけど英語ができるなら検討できる」といったフィードバックをもらいながら企業が求める人材を掴んでいきます。
条件から外れた候補者を出して怒られることもあります。それもフィードバックです。
紹介する理由もなく条件に合わない候補者をポンポン出してくる会社は別です。
給与、語学、経験のどれも求人条件に合っていない。なぜこの人を紹介したのかも分からない。それが続くと推薦数のKPIを追っているように見えてしまいます。
人材紹介会社からの提案は根拠を見る
採用について相談すると担当者から「この候補者は採った方がいい」「この条件なら給与を上げた方がいい」と勧められることがあります。
人材紹介会社からのアドバイスには採用を決めたいという営業側の事情も入っています。そこは少し距離を取って聞いていました。
給与についても「この金額では候補者が受けないと思います」と言われることがあります。人材紹介会社は候補者の希望給与を把握しているのでこの情報自体は参考になります。
私が見ていたのはその提案にどこまで根拠があるかです。候補者本人の希望なのか、同じポジションの採用市場を見ての話なのかで受け取り方は違います。
候補者DBを使って説明してくれる担当は強い
給与の相談で助かったのが人材紹介会社の候補者DBを使って説明してくれる担当です。
「この給与では採用が難しいです」と言われるだけでは判断材料がありません。
同じポジションの候補者がどのくらいいて、それぞれどのくらいの給与を希望しているのか。個人情報を伏せた上で実際の候補者群を見せてもらえると自社の提示額がどの位置にあるのか分かります。
私が採用条件を決める際は日本側の承認が必要でした。「この給与では採れない」だけでは説明しにくくても、候補者DBから実際の希望給与を出してもらえば根拠として使えます。
人材紹介会社の給与データは商工会議所などのデータより高めで、給与を決めるときは両方を参考にしていました。
採用時の給与は市場相場だけで決めるものではなく既存スタッフとのバランスも見ていました。
ポジションによって採用手段を使い分ける
工場のワーカー採用では人材紹介会社を使わず直接集めていました。人材紹介会社は基本的にスタッフ職以上が対象です。
スタッフ職でも求人サイトから直接応募は来ます。採用しやすいポジションならそれで十分です。人材紹介会社を使うのは自社で募集を出して待っていても欲しい人材に届きにくいときです。
特に語学条件が付く人材や専門性の高いエンジニア、他国籍のスタッフは対象者がかなり絞られます。こういう採用では人材紹介会社がすでに接点を持っている候補者に直接声をかけられることに価値があります。
人材紹介会社は仕組みを知って使う
人材紹介会社では求人にも候補者にも優先順位があります。成功報酬で動く以上、すべての求人に同じ時間をかけるわけではありません。
採用する側になってからも人材紹介会社から候補者が出てこないときや、条件から少し外れた人を紹介されたとき、中でどう動いているのかはある程度想像できました。
営業会社なので採用を決めたいという事情はあります。それでも自社では探しにくい人材にアクセスできたり、候補者DBから給与の情報を出してもらえたり、人材紹介会社だから持っている情報があります。
