試用期間中に本採用を見送る社員は実際にはわずかです。
採用時の期待より能力が低くても、担当業務を調整して継続雇用することを優先します。
私が管理していた職場でもほとんどの社員を本採用していました。本採用を見送ったのは主に遅刻や欠勤、勤務態度に問題があった社員です。
試用期間の評価は現場の上司が行い、人事は勤怠記録や評価結果を確認して本採用の手続きを進めます。ただし、不採用となる場合は通常の本採用とは異なる対応が必要になります。
海外拠点における試用期間の基本
試用期間は採用した社員が実際の業務に適応できるか、継続して雇用することが適切かを確認する期間です。
試用期間に関する法制度は国によって異なります。
タイの日系企業では119日を試用期間とするのが一般的です。これは勤続120日以上になると原則として法定解雇補償金の支払い対象になるためで、法律で試用期間の上限が119日と定められているわけではありません。なお、119日以内でも解雇予告などの法的な制約があります。
ベトナムでは労働法によって試用期間の上限が定められており、短大卒以上の専門・技術資格を必要とする職種では60日です。
日本でも試用期間は一般的ですが、試用期間中であっても本採用拒否には解雇に関する法的制約があります。
試用期間の長さだけでなく、本採用を見送る場合の条件や手続きも国によって異なります。特に雇用を終了する判断では現地の制度を正しく理解していないと思わぬ労務トラブルにつながります。
試用期間中の評価と本採用までの流れ
試用期間の評価方法は会社によって異なります。評価表を使う会社もあれば、現場の上司に判断を任せている会社もあります。
実際の運用では試用期間終了の約2週間前に人事部門から採用部門へ評価表の提出を求めていました。評価するのは現地人マネージャーと部門長で、両者が本採用を認めれば人事が手続きを進めます。
実際には評価表を提出する頃には本採用の判断はほぼ固まっています。本採用を見送るような問題があればそれ以前に現場から人事へ連絡が入るためです。
評価表は能力や勤務態度を数字で示すためのものですが、点数だけで合否を決めるわけではありません。
人事でも出勤率や遅刻率を確認し必要に応じて上司に事情を聞きます。特に問題がなければ本採用の手続きを進めます。
採用時の期待より能力が低い社員への対応
面接で高く評価して採用した社員でも、実務では期待した能力を発揮できない。採用面接だけで実務能力を完全に見極めることはできません。
例えば、CADの経験者として採用した社員が想定していたほど複雑な図面を扱えなかったとします。それでも基本的な作業は問題なくこなせるのであれば、複雑な図面の作成は任せず既存図面の修正を担当させるなど、仕事の難易度を調整すればいいのです。
業務態度に問題がなく任せられる仕事があるなら、能力不足だけを理由に本採用を見送る必要はありません。採用をやり直すより本人の能力に合った仕事を任せる方が合理的です。
採用の前提となる能力が欠けている場合は話が変わります。例えば英語での顧客対応を条件に採用したのに必要な英語力がなかった場合。この場合は採用面接で何を確認していたのか。社員の能力不足だけでなく、採用側の見極めにも問題があったはずです。
採用時の期待と実際の能力に差があっても雇用契約で合意した給与を会社側の判断だけで引き下げることはできません。能力に見合った業務を任せ、その後の人事評価や昇給判断に反映するのが妥当でしょう。
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本採用を見送るのはどのようなケースか
本採用を見送る理由として業務能力の不足以上に問題になるのが遅刻や欠勤、勤務態度です。
仕事の習熟度は教育や担当業務の調整で補えます。しかし遅刻や欠勤を繰り返す、上司の指示に従わないといった問題は簡単には解決しません。
そもそも本採用を見送るような社員の問題は入社して最初の1カ月程度で見えてきます。試用期間の終了が近づいてから評価表を見て不採用を決めるのではありません。現場ではすでに問題が認識され、人事にも相談が入っているはずです。
試用期間中の不採用が少ない理由
試用期間は本採用を見送るための制度でもありますが、本採用を見送る社員が少ない背景には採用をやり直すコストがあります。
大きな理由の一つが採用をやり直すコストです。求人の掲載、人材紹介会社とのやり取り、面接、入社手続き、教育など、社員を一人採用するまでには相応の時間と費用がかかります。
特にタイの日系企業で一般的な119日間の試用期間では、約4カ月をかけて育てた社員を手放し再び採用活動を始めることになります。
もう一つは日系企業の雇用に対する考え方です。日本企業には採用した社員を長期的に育成する意識が根強くあります。タイやベトナムでは転職によって給与や待遇を改善することが一般的ですが、日本人管理者には採用した社員との雇用関係を維持しようとする意識が強いと感じます。
会社側が本採用を当然の流れと考えていても、社員本人にとってはそうではありません。社員には採用にかかったコストや、会社が継続雇用を選ぶ事情が見えていないためです。会社側が思う以上に社員は試用期間を無事に終えられるか気にしています。
試用期間管理で人事が注意すべきこと
試用期間の管理で人事が注意したいのは、現場の判断が遅れないようにすることです。
通常の本採用であれば現場の評価を確認して手続きを進めれば済みます。しかし、本採用を見送るとなれば話は別です。試用期間が終わる直前になって現場から「やはり本採用したくない」と言われても、本人への通知や雇用終了に必要な手続きが間に合わなくなります。
人事では社員ごとの試用期間終了日を管理し、期限が近づく前に採用部門へ状況を確認しておきます。本採用を見送る方針であれば雇用契約や現地の労働法を確認し、現場と対応を調整します。
本採用の可否は現場が判断し、人事は期限と手続きを管理します。
まとめ
試用期間の終了時に評価表を確認しても本採用の判断が大きく変わるわけではありません。現場ではそれ以前から社員の仕事ぶりを見て、継続雇用について判断しています。
人事の仕事はその判断を確認するだけではありません。本採用を見送る必要が生じたときに慌てないよう、現場と日頃から情報を共有し、期限を意識して対応することが重要です。
