海外拠点で現地スタッフが退職するとき 離職理由と引き留めの考え方

海外拠点で人事をしていれば現地スタッフの退職は避けて通れません。
給与や昇給率を周辺企業と比べて調整していても退職者は出ます。より良い条件で転職する人もいれば海外で仕事を見つける人、家庭の事情を理由に辞める人もいます。

会社側で対応できる退職もあれば難しいものもあります。退職の理由やタイミングを見ながら引き留めるのか後任の手配に動くのかを判断します。

給与を市場に合わせても退職はなくならない

現地スタッフの給与や昇給率を決める際は周辺企業の水準を確認します。タイの工業団地で人事をしていたときも同じ地域の企業と大きな差が出ないよう給与や昇給率を調整していました。

それでも、より条件の良い仕事を見つけて辞める人は出ます。
工場のワーカーが台湾やイスラエルで仕事を見つけて退職したことがありました。エンジニアが日本の特定技能求人を見つけて退職したケースもあります。

経理スタッフが転職した先はタイに新しく進出した中国系自動車メーカーでした。工場の立ち上げで人材を集めている時期だったため特に良い条件を提示されていたようです。

近隣企業への転職なら給与や医療保険などの福利厚生を含め、競合する条件はある程度見えています。海外就労や新規進出企業が相手になると同じ条件を出して引き留めるのは難しくなります。

採用時にも同じ問題があります。市場に合わせて新しく採用するスタッフの給与を上げると既存スタッフと同程度になったり、場合によっては既存スタッフの給与を上回ったりします。

実際にこの給与差について既存スタッフから不満が出たこともありました。採用時の給与設定では既存スタッフとの給与バランスも問題になります。

ワーカーは残業が減ったことが退職理由になる

タイの工場では残業が少ないから辞めるという話が普通に出てきます。
最低賃金に近い給与で働くワーカーの場合、残業代を含めた毎月の収入で生活を組み立てています。残業込みの収入を前提に家計を組み、家や車のローンを払っている人が普通にいます。

生産量が落ちて残業が減ればその分だけ月収も下がります。すると残業のある別の工場へ転職する人が出てきます。周辺企業との給与比較を基本給で見ているとこの差は見えてきません。

これは製造現場のワーカーの話です。オフィススタッフは全然違います。終業時間になると一瞬で消えるくらいみんなさっさと帰ります。

現地マネージャーと部下の関係は外から見えにくい

日本人管理者との文化的な違いや人間関係が退職理由として挙げられることがあります。私の経験ではよほど癖のある日本人上司でなければ、日本人との人間関係で辞める人は少なかったです。

むしろ把握が難しかったのが現地マネージャーと部下の関係です。
日本人に対する態度は何も問題がなくても、部下には細かく仕事にケチをつけたり、自分の仕事を押し付けたりしているマネージャーがいました。普段の日本人上司とのやり取りを見ているだけではなかなか分かりません。

現地マネージャーに部下の管理を任せる以上、普段のやり取りまで日本人が把握するのは難しくなります。人事への相談窓口を作るとともに、日本人管理者には現地マネージャーと部下の関係まで見るよう徹底していました。上にいる人間がちゃんと見ているぞ、とマネージャー側にも牽制をかけます。

家庭の事情という退職理由をどこまで信用するか

タイやベトナムで現地スタッフが退職するとき「家庭の事情」はよく出てくる理由です。実家に戻る、家族の面倒を見る、個人で事業を始めるといった説明をされます。

日本では「一身上の都合」で済ませることが多いですが、現地スタッフからはもう少し具体的な退職理由が出てきます。

本当に家庭の事情で辞める人はいます。しかし退職後しばらくして別の会社で働いていた、なんてことも結構あります。

家庭の事情と言われると会社側からは踏み込みにくく、引き留めもしにくくなります。会社への不満や転職先について話したくないときにも使いやすい退職理由です。

退職理由に「家庭の事情」が何件あったと集計しても、それをそのまま離職理由の分析には使えません。後から別の会社で働いていたと分かればそもそも退職理由の分類から怪しくなります。

入社直後は人材紹介会社とタッグを組む

バックオフィスや営業では入社して1か月もしないうちに辞める人が出てきます。仕事内容が思っていたものと違った、職場の雰囲気が合わないなど理由はいろいろですが、合わないと判断してから辞めるまでが早いです。

人材紹介会社も入社直後の退職はかなり警戒しています。短期間で辞めれば紹介料の返金や減額が発生するためです。

この時期は企業の人事と人材紹介会社でタッグを組みます。紹介会社から候補者に連絡を入れ、仕事や職場で気になっていることがないか聞いてもらいます。企業側からも入社後の様子を紹介会社に伝えます。

本人が直属の上司には言いにくいことを人事が聞ける場合があります。人事には言わず紹介会社の担当者には話している人もいます。何か引っかかっていそうなら退職の話が出る前にこちらから動きます。

カウンターオファーは基本的に出さない

例外的にカウンターオファーを出したことがあります。資材購入を担当していたスタッフから退職の申し出があり、部署からかなり強い引き留めの要望が出ました。そこで管理職への昇進に加え、転職先を上回る給与を提示しました。

それでも本人は転職先を選びました。転職を決めた理由までは分かりません。他社の選考を受けてオファーを承諾するところまで進んでいれば、本人の気持ちはもう次の会社へ動いています。そこから給与や役職を変えて引き戻すのは簡単ではありません。

結局、社内の別のスタッフを管理職に上げ、新しく人を採用しました。最初は慌ただしくなりましたが、しばらくすると普通に業務は回るようになりました。

退職の意思が固まっているなら条件を積んで引き留めるより引き継ぎと後任の手配を早く始めます。

退職が決まったら引き継ぎは早く動く

退職の申し出があってから実際に会社を離れるまでの期間はかなりばらつきがあります。

会社を気遣って1か月ほど引き継いでくれる人もいますが、そこまで残ってくれる人より数日で来なくなる人の方が多かったです。退職の意思を伝えてから次の会社へ移るまでが日本よりかなり早いのです。

退職すると決まったら引き留めを続けるより引き継ぎと後任の手配を先に動かします。

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