現地スタッフ採用の給与はどう決める?既存スタッフとのバランス

海外で採用をしていると、候補者の希望給与と社内の給与水準が合わないことがあります。

少し条件を上げれば採用できそうな場合どこまで希望に合わせるのか。私が気にしていたのは既存スタッフとの給与バランスでした。

転職者の希望給与が既存スタッフを上回ることはある

東南アジアの転職市場では現在の給与に一定額を上乗せして希望給与を出す人が多いです。

そのため社内で同じような仕事をしているスタッフより若く、経験が少ない候補者からそれ以上の給与を提示されることがあります。

採用する側として悩むのはここです。希望額に合わせれば採用できる。しかしその金額で入社させれば既存スタッフとの給与差が生まれます。

一人を採るために社内の給与バランスを崩さない

人材紹介会社を使っていると「良い候補者なので、このくらいは出した方がいい」「この条件で逃すのはもったいない」と言われることがあります。

紹介会社から見れば条件を少し上げて採用できるなら、その提案が出るのは分かります。

私が見ていたのはその条件を社内で説明できるかです。
同じ部署で長く働いているスタッフより経験の少ない転職者の給与が高くなる(現地ではスタッフ間の給与情報は日本よりオープンです)。既存スタッフに知られたときに説明がつくのか。日本本社から理由を聞かれたときにも同じことが言えます。

社内で説明できない条件まで上げて無理に採用することはおすすめしません。
一人の候補者を採用できてもそれによって既存スタッフが会社の給与制度に不信感を持ち、離職者まで出てしまえば本末転倒です。

給与を上げるなら説明できる形にする

候補者の希望額に近づける場合でも基本給をそのまま上げるとは限りません。私の場合は言語手当や役職手当を含めて調整し、既存スタッフとの違いを説明できる範囲で条件を組んでいました。

営業職ではインセンティブも交渉材料にしていました。基本給では希望額に届かなくても、成果を出した分は収入に反映できるという条件を提示できます。

希少人材がたまたま見つかった。しかし辞められたら次がいない

タイで日本側から「日本語が使えるタイ人IT技術者を採用したい」という要望が出たことがあります。

日本語ができるIT技術者はかなり希少です。バンコク中心部でも簡単には見つかりません。英語が使えるIT人材なら候補者はいますが、日本語を条件に入れると一気に難しくなります。

しかも勤務地は地方の製造業。人事側としては正直これは見つからないだろうと思っていました。

ところが本当にタイミングよく故郷に戻ろうとしていた候補者が見つかりました。日本語ができるIT技術者で、しかも勤務地が本人の故郷と重なった。こちらの条件に合う人材が次にいつ出てくるか分かりません。給与にはプレミアムを付けて採用しました。IT部署からの評価も高く採用は成功でした。

ただ人事としては採れたことで別の心配が増えました。
同じ条件で代わりの人を探してもまず見つかりません。人材紹介会社でも早い段階で諦めるようなポジションです。

特に日本側にはこの採用の難しさがあまり伝わっていなかったので、上司には「辞めたら次は簡単に採れない」と共有しました。せっかく採用できた人材が職場環境や上司との関係を理由に辞めることがないよう特に気を付けてもらいました。

給与にはプレミアムを付けましたが、このケースなら日本語が使えるIT技術者という理由を社内でも説明できます。採用できた後も人事としては気が気ではありませんでした。

条件に完璧に合う人が見つかるのは良いことですが、替えがいない人材を採用すると今度は退職されたときのリスクが大きくなります。採用難易度が高いポジションは採れた後もなかなか大変です。

そもそも自社の給与が相場より低くないか

自社がその職種に対してある程度適正な給与を提示していることが前提です。

例えば、市場では月35,000バーツ程度で採用されている経験者を20,000バーツで採ろうとしているのであれば話は別です。

候補者から高い希望給与を提示されるたびに「既存スタッフとのバランスが崩れる」と言っていても、そもそも既存スタッフを含めた自社の給与水準が市場から離れている可能性があります。

給与相場は変わります。自社の給与帯が現在の市場と合っているかは定期的に確認しておきたいところです。現地では日本商工会議所などが企業へのアンケートをもとに給与データを出しており、採用条件を決める際の参考になります。

日系企業の給与は高いのか

日系企業だから給与が高いとは現在では言えなくなっています。

私がタイやベトナムで採用に関わっていたときも給与データを見ると、日系企業の給与が特別高いわけではありませんでした。日系企業同士で人事について話す機会もありましたが、このあたりの認識はだいたい共通しています。

ひと昔前は日系企業で働くこと自体に今よりブランド力があり、採用でもアドバンテージがありました。現在は欧米系企業や現地の大手企業など選択肢が増えています。

英語を使う欧米系企業は給与水準が高く人気があります。タイやベトナムの経済発展によって現地の大手企業も有力な就職先になりました。タイならPTT、ベトナムならVingroupなどが分かりやすい例です。

韓国企業も以前から存在感があります。さらに近年のタイでは中国企業の進出もかなり目立つようになりました。

日系企業の給与は一般的な現地企業より高い水準にありますが、欧米系企業や大手現地企業と比べて特別に高いわけではありません。企業としてのブランドも以前ほど強くありません。

給与は採用した後まで考えて決める

良い候補者が見つかれば多少給与を上げてでも採りたくなることはあります。
その条件で入社した後、既存スタッフとの給与差を説明できるのか。次の昇給や人事評価で困らないのか。採用時の給与はその後の人事管理にも残ります。

社内で説明できない条件なら無理に採用しない。新しいスタッフを一人採用するために既存スタッフの不信感を招いてしまえば、その採用は成功とは言えません。

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