海外拠点の社員研修 年間計画の作り方・外部研修の選び方・受講後の管理

海外拠点では、人事を専門としてきた日本人駐在員が配置されるとは限りません。管理部門の責任者が人事、総務、経理などを兼務し、現地スタッフとともに社員教育や研修計画を管理します。

日本本社のように教育研修の専任担当者がいなくても必要な研修を選び、予算を調整し、受講後の管理まで行わなければなりません。

では、人事の専門家ではない日本人管理者は現地スタッフから提出される研修計画や外部研修の提案をどのような基準で判断すればよいのでしょうか。

日本と現地の仕事の進め方の違いを研修で補う

日本本社で実施している社員研修をそのまま海外拠点に導入してもうまくいくとは限りません。社員が受けてきた教育や職場での経験、仕事の進め方が異なるためです。

日本企業が長く重視してきた仕事の進め方に報連相があります。海外拠点でも現地社員に身につけてほしいという要望は強く、ベトナムで企業向け研修を販売していた頃、日系企業から繰り返し求められたのが報連相でした。

「報連相が大切だ」と説明するだけでは現地社員にはなかなか伝わりません。例えば顧客との間でトラブルが発生したとき、担当者が自分で解決しようとするのか、すぐに上司へ報告するのか。日本人管理者と現地社員では判断の基準が違うことがあるでしょう。

日本人管理者が求めているのは問題が大きくなる前に情報を共有し、必要な判断を仰ぐこと。その意図を伝えずに「報連相を徹底する」と指示しても現地社員には何を変えればよいのかわかりません。

そこで社員研修の役割が出てきます。報告するタイミングや相談すべき内容を具体的な場面で教え、日本企業が求める仕事の進め方を理解してもらう。日常業務での指導に加えてこうした内容を体系的に学ぶ機会を設ける意味があります。

海外拠点の研修計画では日本本社の研修制度をそのまま踏襲するのではなく、現地社員に何を身につけてもらいたいのかを考える必要があります。報連相はその代表例です。

日本本社の方針を現地スタッフにどう伝えるかについては海外拠点の現地スタッフ管理でも詳しく取り上げています。

年間研修計画はどう作り、何を優先するか

海外拠点でも社員研修は年間計画を作って管理したいところです。各部門が必要に応じて研修を申し込む方式では目先の業務に関係する研修に偏り、社員教育の全体像を把握しにくくなります。

年間研修計画は各部門から必要な研修を集め、人事部門が取りまとめます。研修費用を各部門の予算から支出する方式にすれば研修を希望する部門にも費用に対する責任が生まれます。

安全教育や資格取得など法令上必要な研修は最初に予算を確保します。人事や経理の担当者には現地の労働法や会計制度に関する研修も欠かせません。法改正があれば担当者が最新の制度や実務上の対応を学ぶ機会を設けます。

予算が限られる場合は担当業務に直結する専門研修を優先します。学んだ知識をすぐに仕事で使えるため、受講する目的も明確です。

ベトナムで企業向け研修を提供していた際には昇進に合わせた管理職研修や階層別研修を年間計画に組み込む日系企業もありました。

目先の業務に必要な研修を優先しつつ、将来の管理職候補を育てるための予算も確保しておきたいところです。

管理職研修を計画する際には対象者と目的を具体的にします。新任管理職に部下の指導方法を教えたいのか、既存の管理職の評価面談を改善したいのか。同じ管理職研修でも必要な内容は大きく変わります。

外部研修会社は何を基準に選ぶか

外部研修を利用する際は研修内容に合った会社を探します。労働法や会計制度はその分野の専門家、安全教育や資格取得は現地の制度に対応した研修機関に依頼します。管理職育成やチームビルディングなどは企業向け研修会社が中心です。

研修会社を比較する際に確認したいのは担当する講師です。同じ会社でも講師によって研修の内容や進め方に個人差があります。講師の経歴や専門分野、研修プログラムの内容を確認しますが、初めて依頼する講師の力量を事前に見極めるのは簡単ではありません。

そこで役立つのが過去に受講した社員による講師評価です。研修後のアンケートで講師の評価を集め、クラウド上に記録しておきます。研修会社では同じ講師が長く担当するため、数年前の評価が次の研修選びに役立ちます。研修会社名と講師名をセットで記録しておけば過去の評価を簡単に確認できます。

研修費用の高さと講義の質は比例しません。立派な会場や豪華な食事が用意されていても、講義の内容は平凡という研修もあります。

研修終了後にどのような報告を受けられるかも確認しておきたいところです。受講者アンケートの集計だけで終わる会社もあれば、講師から研修中の様子や受講者の理解度について報告を受けられる会社もあります。研修後にどこまで報告してもらえるのか、契約前に確認しておくとよいでしょう。

公開講座と企業別研修をどう使い分けるか

外部研修には複数の企業から受講者を集める公開講座と、一社の社員を対象に実施する企業別研修があります。受講人数や研修内容によって使い分けます。

公開講座は少人数の社員を研修に参加させたいときに便利です。労働法や会計、管理職向けの講座など、研修会社が用意した日程とプログラムから選びます。参加費は通常1人あたりで設定されているため、対象者が1〜2人でも利用しやすい形式です。

企業別研修は一定人数をまとめて受講させたい場合や、自社の業務に合わせた内容を盛り込みたい場合に向いています。例えばクレーム対応研修でも、ホテルなら宿泊客からの苦情への対応、物流企業なら配送遅延や荷物の破損に関する顧客対応が題材になります。同じ研修テーマでも業種によって演習で扱う場面は変わります。

企業別研修といってもすべての教材を一から作るわけではありません。研修会社が持つ標準プログラムをベースに、事前の打ち合わせで事例や演習内容を調整する形が一般的です。依頼する側も、社員にどのような場面を想定して学んでほしいのかを具体的に伝える必要があります。

研修に参加させる社員をどう選ぶか

業務上必須の研修は担当業務に応じて受講者を決めます。ロジカルシンキングやプレゼンテーション、リーダーシップなどのソフトスキル研修では本人の受講意欲も考慮します。

こうした研修への参加を日頃の仕事ぶりに対する報酬のように受け止める社員もいます。会社の費用で自分のキャリアにも役立つスキルを学べるため、向上心の高い社員には魅力的な機会です。研修に参加できる環境がその会社で働き続ける理由にもなります。

ソフトスキル研修は仕事で成果を上げている社員や今後の成長を期待する社員に、会社からの評価や期待を伝える機会にもなります。

研修内容によっては各部門から代表者だけを参加させる方法もあります。労働法や会計制度の改正に関する研修なら、担当者が受講し学んだ内容を部門内で共有できます。実技や演習が中心の研修はスキルを身につける社員本人を参加させる必要があるでしょう。

受講後の報告と研修効果の確認

外部研修を受講した社員には必ず研修報告書を提出してもらいます。学んだ内容や業務への活用方法を記載し、直属の上司が確認して承認します。

研修報告書を書くのを面倒がる社員もいますが、会社が費用を負担している以上、提出は徹底させます。受講者には学んだ内容を報告する責任があり、報告書の提出までが研修です。

過去の研修報告書を読み返せば以前どのような内容を学んだのか確認でき、次回の研修を選ぶ際にも役立ちます。

研修会社が実施する受講者アンケートも参考になります。ただし、アンケートで評価が高かったからといって研修内容が実際の仕事に役立ったと判断するのは早計です。講師の説明がわかりやすかった、研修が楽しかったという評価と、職場で実際に役立つかどうかは別の話です。

管理職研修で部下の指導方法や評価面談について学んだ社員が実際の職場でどこまで実践できているか。その後の変化は日頃から本人の仕事を見ている直属の上司に確認してもらいたいところです。

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